読み聞かせの本選びに迷うことはありませんか?
先日久しぶりに小学校での読み聞かせをした時に、選書で少し悩んだのですが、
その後、そんな悩みを解消してくれるような素敵な本に出会いました。
「子どもに定番絵本の読み聞かせを 選書眼を育てる60冊の絵本リスト」 尾野三千代著
児童図書館研究会HP
出版元では残念ながら現在品切れ中のようですが、図書館などでぜひ探してみてください。
著者の尾野さんは、ご自身が子育て中に絵本に親しまれたことからストーリーテリングなどを学ばれ、
図書館の職員として児童図書に長く関わってこられた方のようです。
「定番絵本」の読み聞かせを通して選書の規準を学ばれたご経験が書かれた本書から、
読み聞かせに役立つ知識として、定番絵本とその価値について、内容をまとめてみます。
そもそも、定番絵本とは?
ここで言う定番絵本というのは、「長く読み継がれてきた本」の意味で、
最近多く読まれているものではありません。
ロングセラー絵本、という言い方が分かりやすいでしょうか。
時代が変化しても子どもたちが親しむ本には、どの時代の子どもにも訴えかける何か、
つまり、子どもたちが共感し、理解できる普遍的なテーマやメッセージがあり、
子どもたちの成長の糧となります。
それを本書では「定番絵本」と呼んでいます。
なぜ、定番絵本なのか?
子どもたちが持つ共通のニーズに、以下のようなものがあります。
・ものごとを成し遂げること
・物理的、精神的に安定した状態
・知ること
・愛し、愛されるという情緒的な満足感
・家族に属し、社会の一員であるという連帯感
・現実の生活からの変化、想像の世界
・美と秩序
定番絵本には、これらを満たし、子どもの精神的な充足感につながる要素が含まれていることが多いようです。
そして、子ども自身が、このようなニーズとおとなや社会から求められるものとの間でバランスを取りながら成長していく過程の中で、
時に葛藤を緩めてくれるような側面が、読書や読み聞かせにはあります。
子どもから学ぶことについて
さらに筆者は、子どもから学ぶ姿勢が大切と述べていらっしゃいます。
図書館でのおはなし会などのご経験から、
実際の子どもの反応から大人が選書を学ぶ、その実践の繰り返しが選書眼を育てていくものだというお考えに至ったそうです。
さらに、読み聞かせというのは、ゴールではなくて、本の宣伝の場。
そこから、子どもたちが自分でその本を手に取り、
読書の世界が広がっていくきっかけとするものだと。
最後に
大人はつい、子どもに何かを教えようとしてしまうものですが、
子どもは適切な環境やサポートがあれば自分でどんどん吸収していきますね。
それを考えると、「子どもから学ぶ」ということの方が本質なのかもしれません。
本書は、読み聞かせの意味や、子どもにとって絵本がどのような価値を持っているかといった、
「そもそも」の部分を考えるきっかけとなりました。
ここでは紹介しきれませんでしたが、この本には、絵本や児童文学の歴史も書かれており、
戦後、多くの良書を子どもたちに届けられるようになるまでの様々な努力と活動を知ることもできます。
今は本の出版数が多く、質も様々ですが、その中から本当に良いものを選べるようになりたいですね。
本書の最後には、尾野さんの選ばれた60冊の絵本リストもあり、
各絵本の概要、特徴や対象年齢も書かれていて、選書のよりどころになります。
子どもたちが良質な絵本に触れ、審美眼や本質を見る力が育つささやかなきっかけとなるような読み聞かせを目指して、経験を重ねてみようと思います。
子どもの本の世界、奥が深いですね!
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